銀杏BOYZについて語る座談会 [峯田和伸 x 村井守 x 磯部涼 x 九龍ジョー]

構成:小田部仁
写真:村井香

磯部 実際、GOING STEADYから銀杏BOYZへの飛躍があったからこそ、今があるわけじゃないですか。

村井 あの頃、ライブ終わった後、結構言われましたよ。えーこういう感じなんですかって。ちゃんと演奏しないんですねって。

峯田 ちゃんと演奏しないがテーマだったからね。本当は前のアルバム(『光のなかに立っていてね』)が出たらツアーで、全国回れればよかったんだけどね。

磯部 「もし、あの頃の銀杏が続いていたとしたら?」みたいなパラレルワールドって想像します?

峯田 たまにある。夢見るもん。

村井 それは たまに俺もありますよ。

峯田 一ヶ月に一回くらい見るんだよね。

村井 前にみんなでツアー回ってる夢を見たことがあったんですよ。で、次の日、満員電車乗ってたら、急に涙が出ちゃって。辞めて1年以上経ってたんですけど「アァ、俺、こういう感情あったんだな。ツアー回りたかったんだな」って思って。

磯部 「生きたい」の歌詞みたいじゃないですか(笑)。さっきは、「バンドを辞めても生活はあんまり変わってない」って言ってたけど、そういう感情もあったんですね。

峯田 あんまり言いたくないんですけど、レコーディングが本当に長くていつ終わんのかなって思ってて。でも、これさえ終わればツアーが回れるぞっていうのを糧に生きているところがあったから。いざ終わったら、メンバーが居ないっていうのは、すごい経験でしたね。

磯部 そりゃなんのためにやってたんだろうって思いますよね。もちろん、作品は残ったけど。

峯田 作品は残ったけど、みんな死んでったなっていうのがあって。DVDの編集が終わった時は、生では見せられないけど、全国リリースで、やっと姿を見せられるなって思いました。

磯部 つまり、このDVDは4人の銀杏BOYZにとっての最後のツアーでもあると。「生きたい」はエンディング・テーマ的な感じ?

峯田 そうですね。だから、ドキュメント的な要素は入れないでいいやって思ったし。今回は楽屋でのオフ・ショットは入れないで、もうライブ映像だけ。字幕とか日付も入れないで、時系列無視して。テロップは「どうかこの世界がひとつになれませんように」って、あれぐらい。

磯部 シングルに関しては、そういうデッドエンド感のある曲の後に「ぽあだむ」のリミックスが入ってるのは救われますけどね。これって、ストリングスは新録?

峯田 詳しくはあえてクボタ(タケシ)さんに聞いてないけど、でも、生で録ってるところが多いって言ってた。

磯部 それにしても、「ぽあだむ」はすごい曲だと思うなあ。

峯田 え、うれしいなあ。


九龍 あの曲がまだ発表される前の時期に、お客さんの前でやってる映像もDVDに入ってるけど、お客さんがちょっと戸惑っている感じもよかったよね。聴いたことがない曲っていうのはもちろんなんだけど、かぶりつきで熱狂していた人たちが、急にポカンとしている感じが面白かった。

磯部 政治的なトピックを扱った歌に関しては、いろいろブーブー言うタイプなんですけど、あの曲に関しては不謹慎なところがいいなって思って。要するにあれって、計画停電があって、暗い東京に居心地良さを感じてるって歌ですよね。それまで、自分の部屋っていう暗い閉じられた空間だけで落ち着けたのが、東京が同じような状態になって、初めて外に出て行けたっていう。それを臆せず歌ったのはすごいと思いますけどね。

村井 あれっすよね。震災の文脈で語ると悲劇でしかないけれど、自分の生活の文脈で語ると違う見方ってあるじゃないですか。僕はそう思いました。

九龍 「ちびまるこちゃん」の大洪水の回もちょっと思い出した。あれ静岡の七夕豪雨の話で、かなり大規模な災害で街中大変なことになっているんだけど、子供たちは屋上に避難している非日常感でテンション上がっちゃうっていう。

磯部 東京はそれぐらいの被害で済んだっていう話なのかもしれないですけどね。というか、東京に住んでると、良くも悪くもそれくらいのリアリティのはずなのに、「震災で人生が変わった」とかうそぶいてるひともいて。それよりかはよっぽどリアルな歌だと思う。そういえば、アルバムが出た時のインタヴューで、「ぽあだむ」は小沢健二の「強い気持ち・強い愛」の2011年版じゃないか≠チて話もしてましたよね。あの頃の東京はキラキラして好きだった。そして、計画停電の時も暗いけどキラキラして見えたって。

峯田 たった4日間だったけど、暗くて……そこに、東京の未来を感じたんだよね。いい未来。

九龍 あの時そう感じた人は、少なくない人と思うよ。

磯部 震災ユートピアみたいな?

峯田 これから東京オリンピックが開催されて、国民が一つになっていくっていうのが全く感じられないんだよね。64年オリンピックのような感じには絶対なんないし、そういう風にしようとしているのが気持ち悪いしね。

九龍 無理だろうね。

峯田 結局、一つになることって、悲劇になっちゃうかもしれないんだけど。

村井 あの頃はよかったって、元に戻そうとするからね。

峯田 視聴率20%の番組なんて絶対出てこないし、

[1][2][3][4][5][6]

-TOP-