銀杏BOYZについて語る座談会 [峯田和伸 x 村井守 x 磯部涼 x 九龍ジョー]

構成:小田部仁
写真:村井香

九龍 今回の映像見て、「あん時の俺、輝いてたな〜」とか思ったりします?

村井 その目線は全然ないんですよね。割と今も思っていることやれているのかなって。自分は前に出るほうや座席に立つ方じゃないんですけど、試合してる人たちを見て、もうちょっとこういう風になったらなって動かせている気はするんですよね。

磯部 今から振り返ってみて、銀杏を辞めたこと、音楽を辞めたことって、村井くんにとって挫折ではないんですか?

村井 挫折ではないです。

九龍 やりきったって感じ?

村井 やりきったって、もしかしたらその時言ってたかもしれないんっすけど。やりきったって、ちょっと嘘くさいですよね?

峯田 言ってたよ、お前。

村井 今思えば、嘘くさいですけど、その時は、本当にそう思ってたんだよね。

磯部 「俺が看取って辞める」くらいの感じのこと言ってましたよ。

村井 言ってましたよね。でも、今考えると、やりたいことあるんで、やりきった……ってないなって思うんですけど。その時はそう思ったんです。あ、もう、俺はやりきった……バンドやりきったわ……ってその時は思ってたんで。

峯田 でもさ、たまーにさ、ふとさ、一人で家いるときに、あの時バンド辞めてなかったらなって思う? いまこっちの選択肢にいるけど、もしあの時、峯田と二人でしゃべって、こっち選んだらまた違ったなとか思う?

村井 それは……もしかしたら、バンド辞めてなかったら、自分の離婚とかはなかったかもなってのは思いますね。

磯部 離婚は脱退が原因なの?! 負のスパイラルじゃないですか。

峯田 でも、奥さんはバンドやってがんばってる村井君のこと絶対好きだったし、レコーディングとかで忙しくて、奥さんのことかまってあげられない時もあったけど、でもレコーディング終わったらやっと……って感じだったのに。

九龍 でも、ここ(峯田と村井)だって、言ったら「別れた夫婦」みたいなものでしょ?

峯田 俺はまだバンドやってるから音楽やってるから、まだいいんですけど。辞めた人間ってさ、どう思うんだろうなって気になるんですよね。俺がドラマ出るにしても、シングル、DVD出すにしても、露出があるわけでしょ? その情報って目に入ってくるでしょ? それ見てどう思うのかなって。

村井 それは、普通に生活していて、たまたま情報入ってくるっていうよりは、割と俺が積極的に見てるから。ホームページとか。

峯田 それ、別れた元カノが元カレのFacebook調べたりとかエゴ・サーチする感覚だよね? どうなのそれ健康的なの? それでべつにいいんだ?

村井 それでいい。頭抱えるようなことはない。うわーとか、嫉妬とか、ない。

磯部 じゃあ、何が動機で見てるんですか?

村井 それは、もう日課ですね。銀杏のホームページを見るっていうのが日課なんすよ。

磯部 バンドの頃の習慣が残ってるってこと? 関係ないのに?

村井 今の会社でやってる仕事が、ただテレビやってる人じゃないんすよね。 "元銀杏"って周りが認識している環境なんで。あんまり生活が変わってる感じがしないというか。やってることは違うんですけど。

峯田 将来いつか自分がやってることで、俺を自分がやってるフィールドに持って来たいとか、そういうのはあるの?

村井 それは……ちょっとあるね。

峯田 番組出て欲しいなとか?

村井 でも、怒られるっしょ……。こういう番組があるからってオファーしても「面白くねえわ」とかどうせ言われるから。そんなの持っていけないでしょ。

磯部 今ここでオファーしてくださいよ。

峯田 友達だからつって、軽々しく受けないけどね。

村井 直で峯田にいけないでしょ。マネージャーに一回通して、相談して。

磯部 だから、ホームページ見てるんだ? 「スケジュール空いてるかな」って。

村井 そうそう、「この辺、いけるんじゃないかな?」ってチェックしてね……。ちなみに、俺、別れた経験って今までなかったんだよね。

九龍 そうだよね、初めてつきあったのが元・奥さんだもんね。

村井 まあ、さっき、九龍さんが言ったように、ここもカップルみたいなもんですから。生まれて初めての別れるっていう経験は峯田かもしれないです。その後で奥さんだった。

九龍 一回、バンドでの別れを経験してたから、奥さんと別れるときは免疫があったんだ?

村井 いえいえ、デカかったですよ?

磯部 銀杏っていう熱狂が終わった時に、ふっと自分と向かい合う。そういう感じはあったんですか?

村井 自分と向き合いたくない。人生を振り返りたくない。

九龍 峯田君的には、ある程度、メンバーが抜けたあとの気持ちっていうのには整理がついたんですか?

峯田 うん。村井くんが抜けて、最初の半年くらいキツかった。やっぱり、どっかでまだ、村井くんと一緒にやりたいなって気持ちがあった。でも、パルコ劇場で『母に欲す』に出た頃くらいかな。もう後ろ見てらんねえって。

九龍 あの舞台もまた、ずいぶんと激しい現場だったしね。当時の峯田君と重なるような役だったし。

峯田 あの時期から、会いたいって気持ちから、顔も思い出したくねえわぐらいに変わった。まぁ、それは言い過ぎだけど。18歳でバンドを始めてから、そっから20年近く一緒にいたわけで。もはや結婚してたみたいなもんだよね。でも、そこからやっと抜け出せて友達に戻れた感覚があったんだよね。だから、本当は普段から俺はもっと会いたいんだよ。あの頃には話せなかったこといっぱいあるし。今なら話せる気がする。

村井 辞めてから一度も銀杏のライヴは観に行ったことなかったんですけど、この間、1月にリキッドルームでコレクターズと対バンした時に観に行って。客として観るのは20年ぶりくらいだったんですけど、なんか新鮮だったんですよね。っていうのは、GOING STEADYに入る前に5〜6回ぐらい観に行った頃と全然変わってなかった。俺、峯田の直線上、目線のところで観てたんですけど、

磯部 いままではドラムとして背中を見てたのが、初めて直で歌ってる顔を見たと。

村井 俺は、貫禄を感じたんですよ。変わらないひとって、貫禄あるんですよね。一人で嬉しくなっちゃって。飲みましたよ、その時は。音楽性とかは確かに変わってるんだけど、客席に向かってくる感じ……熱量は変わってない。

峯田 それは、後ろにいたからわかんなかったんだろうね。

磯部 俺は銀杏の再始動してからのライブを観れてないんですけど、峯田君としては元メンバーへの思いみたいなものは、いまは完全に吹っ切れたって感じなんですか?

峯田 チン君は全然連絡とってないですね。アビちゃんに関しても、共通の知り合いとかから「アビちゃん、頑張ってるねー」って言われるけど、俺、全然会ってない。

磯部 元メンバーのその後の人生が、気になるようなところはあります?

峯田 半分は自由にやってくださいって思う。でも、半分以上はもう……あんまり気になってないかも。ただ、みんな本当に楽しくやってたらいいなって。

九龍 2011年のライブとかさ、みんな研ぎ澄まされた顔してるよね。チン君なんて風貌もそうなんだけど、佇まいがほとんど修業僧みたいで。


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